故人を天へと送り届ける儀式、チベット伝統の葬儀「鳥葬」

http://karapaia.com/archives/52148034.html   より

鳥葬とは、中国青海のチベット地方、内モンゴル地方などで古くから行われている鳥を使った葬儀のことで、現在もその伝統は続いている。

 チベットの鳥葬はムスタンの数百年後に始まったと考えられている。チベット人の多くは、輪廻転生を説くチベット仏教を厚く信仰している。彼らにとって死んでしまえば体はただの空の容器にすぎない。魂の抜け出た遺体は保存しておく必要はないため鳥に食べさせる葬によって処理をする。遺体は細かく切り刻んで放置し、ハゲワシのような死肉を常食する鳥に食べさせる。

鳥葬にはまた、多くの生命を奪って生きてきた人間が死後、魂が抜け出た肉体を、他の生命に役立ててもらおうとする思想もある。

鳥葬後、ハゲワシの群れのそばを通り過ぎるラマ僧

ハゲワシの群れを見学するラマ僧と観光客。鳥葬はそれほど身分の高くない一般人の遺体を葬送する手段でもある

遺体の一部は一年間沈黙の塔に安置され、風雨にさらされる。男女は別々の場所に置かれる

 鳥葬は、郊外の荒地に「祈りの旗」と呼ばれる無数の布をかけた鳥葬台を作ることからはじまる。

鳥葬台にかかる祈りの旗

祈りの旗でうつ伏せになり、故人に祈りをささげる親族

祈りの旗に集まってきたハゲワシ

鳥葬の儀式では、ラマ僧が遺体のそばでマントラを唱え、ビャクシンの香をたく。その後、遺体はラマ僧か専門の職人によって解体される。解体職人は仏教の教えに従って、高潔な精神で作業をこなし、死者の魂を天へ解放する。

遺体の骨を押しつぶす解体職人

遺体を解体する前に祈りをささげる解体職人

ハゲタカに遺体の肉を提供する解体職人

 解体職人は、肉が食べつくされ、骨が残されると、それを槌などで叩きハゲタカが食べやすいようにする。それでも残った骨は、さらに細かく砕いてツァンパという大麦と一緒にすりつぶす。茶葉入りの大麦粉やヤクのバター、ミルクの場合もある。今度はそれをハゲワシが去るのを待っていたカラスやタカなどに与える。遺体を余すところなくすべての鳥に分け与えるのだ。

解体職人は葬儀が終わると水で顔を洗い身を清める

 チベット高地で鳥葬が一般的になった理由のひとつにその土地柄も関係している。大きな木がほとんど生えないチベット高地で火葬を行うには薪の確保が困難である。また、寒冷地帯であるため、土が固く穴掘りも困難で、微生物による遺体の分解も不完全となるため、土葬にするのも大変だ。

 その為、病原体の拡散が起こりうる危険性のある伝染病の死者以外には鳥葬が行われるようになったのだという。

 

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