http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/2374/index.html より
【“千の風”に寄せる思い】
19世紀中頃、アメリカで生まれたといわれている詩、「千の風になって」は「米同時多発テロ」や「IRAテロ」の遺族など、世界中で、悲しみにくれる人々を励ましてきた。日本でも神戸の教会に事故や病気で家族を失った人たちが集まり、毎月、この詩を歌い継いできた。詩に曲をつけた作家・新井満氏のもとには5000通を超える手紙が寄せられている。「家族を亡くした悲しみを癒された」「病気と闘う力をもらった」など、一人ひとりの心情が綴られている。番組では、この歌に生きる力をもらったという全国各地の人びとを訪ね、その思いを描くとともに、新井満氏をゲストに迎え、「千の風になって」の誕生秘話や「死生観が変わった」という詩のメッセージについて聞く。
先週、大手ビールメーカーが、外資系ファンドから突然の買収提案を突きつけられた。国内でも、M&A件数は増え続け、大手企業の合併や提携の動きが相次いでいる。今、膨張する世界市場では、圧倒的な優位に立つため、買収に次ぐ買収で一気にシェアを拡大しようという企業再編が加速。その波が日本に本格的に押し寄せようとしている。国際的に時価総額で大きく遅れをとる日本企業が草刈り場になるのではないか、と経済界は危機感を強めている。『大買収時代』を前に日本企業はどのように変わろうとしているのか。その行方を考える。牛島 信さん (作家・弁護士)
世の中の課題をビジネスの手法で解決する「社会起業家」。去年、バングラデシュの貧困を独自の無担保融資で解決してきたグラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁がノーベル平和賞を受賞したことで大きな注目を集めている。日本でもここ数年、社会起業家を目指す若い世代が次々と登場。社会起業家のビジネスコンテストも開催され、20代を中心に毎回90件近い応募が寄せられている。地域のネットワークを利用して病児保育を行う事業や、カンボジアの貧しい子どもたちを支援するビジネスなど、軌道に乗り始めた事業もある。社会貢献をビジネスの形で実現しようとする若者たちの姿を追い、彼らが求めているものと新しい社会の仕組みのあり方を、探っていく。田坂 広志さん (多摩大学大学院教授)
インターネット上の仮想世界で他のプレーヤーとチャット(会話)を楽しみながら競い合うオンラインゲーム。この世界で今、”錬金術”ともいえるカネのやりとりが問題になっている。ゲーム上の仮想通貨を現実の通貨で売買する”リアルマネートレード(RMT)”。売買を仲介する専門業者もこの1~2年で急増。市場規模は150億円とも言われる。ゲーム通貨の購入に年間百万円以上使うマニアもいる。一方で、RMTをめぐる詐欺や不正アクセスなどのトラブルが多発。去年11月には、RMTで不正に稼いだ2億円を中国に送金していた留学生が熊本県警に逮捕された。中国人による同様の事件は他にも起きており、資金の一部が犯罪組織に流れているという指摘もある。ネットの世界で過熱する知られざる錬金術の実態に迫る。新 清士さん (立命館大学大学院講師)
18日、国内初の大都市マラソン「東京マラソン」が行われる。新宿、銀座、浅草などが最大7時間封鎖され3万人のランナーが都心を駆け抜ける。国内のランニング人口が2千万人超と言われるブームの中、市民ランナーの長年の夢が実現した。主催する都では、東京を海外にアピールし経済効果をもたらす絶好のチャンスととらえ、大手広告代理店と組んでキャンペーンを展開。予想を上回る数の企業がスポンサーに名乗りを上げている。しかし草の根運動からスタートした海外のレースに比べ、東京の大会が本当の意味での”市民マラソン”として定着するのか疑問の声も多い。レースを通して毎年70億円近い募金が集まるロンドンの例なども伝えながら、都市マラソンの意義や文化について考える。有森 裕子さん (マラソン選手)
2月12日、広島で開かれる「若年期認知症サミット」。家族の会が中心になり、本人、家族、医師ら600人が参加して、若年認知症の人が抱える問題と支援のあり方を探る、画期的な試みである。働き盛りの認知症の最大の問題は、「仕事」をどうするか。認知症になっても働き続けたい本人、雇い続けるか判断を迫られる企業。多くの認知症の人たちが、偏見を恐れ、会社に病名すら告げられずに仕事を続け、最終的に退職に追い込まれ、家族も危機に陥る。そうした中、認知症であることをオープンに語ることで、職場の理解を得て、仕事を続けている男性もいる。サミットで本人として講演を行い、切実な思いを訴えた中田新吾さん(43)もその一人。会社側は今月、社内報で中田さんの病気のことを伝え、社員に理解を求めることも決めた。65歳以下で発症する「若年認知症」は推定10万人。専門家の間では増加しているという見方が強く、厚労省も実態調査に乗り出した。働き盛りを襲う病に、職場はどう向き合い、社会はどう支えていくべきなのか。模索を続ける現場を追う。松本 一生さん (大阪人間科学大学教授)
「天下分け目の戦い」とされる夏の参院選に向けて対決姿勢を強める与野党。与党側は政権の支持率低下、野党側は連携の乱れといった不安材料をそれぞれ抱える中で始まった通常国会は、女性を「産む機械」などとした柳沢厚生労働大臣の発言をめぐって冒頭から波乱含みの展開となった。番組では国会、そして参院選の試金石と位置づけられた地方選挙を舞台に”政治決戦”を勝ち抜くための戦略をぶつけ合う与野党の攻防に迫る。松谷 豊 (NHK政治部・記者)
日本で犯罪を起こした外国人容疑者が、海外に逃亡したまま、処罰を免れているケースが相次いでいる。中でも、ブラジル人容疑者は80人を超えているが、何の罪にも問われないまま、普通の生活を送っているのが現実だ。被害者の遺族たちは、日本での裁きを求めて、身柄の引き渡しを訴えているが、ブラジルの憲法では、自国民の引き渡しを禁じていることなどから、その思いは届いていない。こうした中、現地の司法当局が現地の国内法で処罰する、いわゆる”代理処罰”の動きが始まっている。今月6日、8年前に静岡県で起きた死亡ひき逃げ事件の容疑者が、初めて代理処罰で起訴され、その初公判が行われた。果たして、事件の真相解明の糸口となるのか、遺族たちの心の傷は癒されるのか。番組では、遺族たちのやり場のない怒りの声を伝えるとともに、国外逃亡を続ける容疑者の実態を追い、この問題に、国はどう対応するべきなのか、その課題を考える。フィリップ・オステンさん (慶應義塾大学専任講師)
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