旅の日(5月16日・奥の細道出立の日)
二荒山さらに芭蕉のやどりかな 高資
(二荒山=男体山=黒髪山=大国主命=日本最古の医神)
http://saisei-navi.com/hiza/regenerative_medicine/story/ 【再生医療とは?】
「再生医療」は、“病気や事故などの理由によって失われたからだの組織を再生すること”を目指して提案された医療技術です。よく「根本治療」ということばが使われますが、失われた組織や臓器を根本的にもとどおりにすることを目指しています。
そのため、再生医療では生きた細胞を使ったり、人工材料をうまく使ったり、遺伝子を入れた細胞を使うなど、さまざまな新しい技術を使用した基礎研究がおこなわれてきました。
いろいろな技術がある中で、ここでは1990年代にアメリカの医師と工学者が唱えた「Tissue Engineering(ティッシュエンジニアリング)」をご紹介します。
人工的に臓器・組織を作る「ティッシュエンジニアリング」
ティッシュエンジニアリングとは「機能を失った臓器や組織の代替品を、生命科学と工学をうまく組み合わせて作り出す考えのこと」をいいます。具体的には、患者さんの「細胞」、細胞が活動するためにとても重要な場所(骨組み)を提供する「マトリックス」、私たちのからだに良い作用をもたらす栄養成分である「生理活性物質」の3つを上手く組み合わせることで、人工的に臓器や組織を作るという考えです。
ティッシュエンジニアリング
ティッシュエンジニアリングの主役は細胞です。私たちのからだは約60兆個の細胞でできていますが、ほんの少しの組織や臓器を作りたい場合でも数億個の細胞が必要となります。そのためには、体から取り出した少量の細胞をたくさん増やす必要があります。ただし、たくさんの細胞を増やすことができたとしても、それらがからだの中にいたときのように働いてくれなければ意味がありません。よって、細胞の働きをしっかり維持しながら大量に増やす技術がとても大切になります。
骨組みであるマトリックスも重要です。理想的なマトリックスは、移植後にすみやかに消えていって、まわりの細胞がつくる自然のマトリックスに置き換わってくれるものですが、これに近づくために工学者を中心に多くの研究・開発がおこなわれています。
理想の再生医療をめざして
理想的に培養された細胞と、理想的なマトリックスがあればすばらしい人工臓器や組織が作れそうですが、まだ課題があります。臓器がきちんと働くために、細胞をきちんと並べる必要があるということです。皮膚や骨、軟骨などはバラバラに細胞を入れてもほとんど問題なく機能しますが、肝臓や腎臓など多種類の細胞でできている複雑な臓器では、細胞を本来の臓器と同じ順序や構造で並ばせる技術が必要となってきます。ティッシュエンジニアリングにより、皮膚や軟骨などすでに製品化されているものがある一方、肝臓や腎臓など複雑な臓器をつくる技術はまだ研究の段階です。
みなさんのからだの細胞からティッシュエンジニアリングによって人工的に組織や臓器をつくり、その治療を実現する再生医療には、その組織や臓器を作って提供する企業・施設や病院だけでなく、受ける患者さんの深いご理解とご協力がなくてはならないのです。
「再生医療」の技術のひとつ「ティッシュエンジニアリング」
「再生医療」とは、病気や事故などによって失われたカラダの組織や臓器の再生を目的とした新しい医療技術です。
中でもすでに医療現場で実用化されているものに、「ティッシュエンジニアリング」というものがあります。
皮膚や軟骨ですでに実用化されており、患者さんへの恩恵が大きい再生医療の技術のひとつとして注目を集めています。
ティッシュエンジニアリング
国内では再生医療に公的医療保険が適用され始めています。
再生医療と聞くと先進的なイメージが強く、治療を受けたくても公的医療保険は適用されないと思われがちですが、日本では公的医療保険が適用される治療法があります。
たとえば、重症のやけどの患者さんや生まれつき大きなあざがある患者さんに対して、患者さん自身の皮膚の一部を培養して作られた表皮を移植する方法や、ひざの軟骨が大きく欠けてしまった患者さんに対して、患者さん自身の軟骨の一部を培養して作られた軟骨を移植する方法などです。
治療が受けられる病院は限られていますが、公的医療保険が使えるということは、国がこれらの治療方法を審査して承認しているのです。
今後は、再生医療による治療が増える!?
再生医療はまったく新しい治療技術であるため、その臨床応用や、企業が製品として承認を受けることについては、これまで大変慎重に進められてきましたが、再生医療を安全に早く広めようという法律が2014年11月25日に施行されました。これにより、国民の皆さんが再生医療の恩恵を受ける機会が増え、治療の選択肢が増えることが期待されています。
京都大学の山中伸弥先生らが世界に先駆け開発し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した「iPS細胞(induced pluripotent stem cells:人工多能性幹細胞)」の臨床研究が、2014年に世界で初めてスタートしました。
iPS細胞は、いろいろな組織や臓器になる細胞。
きれいな小川や池にすむヒルに似た「プラナリア」という生き物がいますが、プラナリアはからだをいくつに切られても、それぞれの断片が1匹のプラナリアに増殖します。なぜ、そんなことが可能かというと、プラナリアにはどんな細胞にも分化することができる幹細胞があるからです。しかし、人間はからだの一部を失ったらプラナリアのように再生することはできません。
もし、人工的にどんな細胞にも分化することができる細胞を作り出すことができたら、病気や事故で失った組織や臓器を再生することができるかもしれない。そんな夢を実現する可能性を秘めているのが「iPS細胞」です。
iPS細胞とES細胞の違い。
人間の細胞も受精卵の時点では、骨や皮膚や心臓などどんなものにもなれる能力(全能性)を持っています。
なぜなら、人間の骨も臓器も皮膚もすべて受精卵から分化したものだからです。ところがいったん分化した細胞は、基本的に別の種類の細胞に変化したり、もとの幹細胞に戻ることはありません。
ES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)は、受精卵が胎児になるプロセスで、分裂が始まった後の胚盤胞(はいばんほう)の中にある細胞を取り出して培養されたものです。しかし、これは赤ちゃんとなる受精卵を使って作るため、倫理的な問題がありました。
「iPS細胞」が画期的なのは、皮膚などの細胞に遺伝子操作を加えることで「ES細胞」のような幹細胞になることです。これなら受精卵のような倫理的な問題はありません。一方、遺伝子操作をおこなうことによる安全性(ガン化のリスクなど)は、今後の課題となっており、日々研究が進められています。
ES細胞やiPS細胞は、再生医療に用いる細胞としてだけでなく、病気の発症する仕組みや病気の原因調査、新薬の開発、細胞を用いた治療の研究など様々な分野での応用が期待されています。
今後も世界中で研究され、これからの医療を変えていくことでしょう。
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