アントロポゾフィー医学

http://j-paam.org/archives/871【新型コロナウイルス(COVID-19)に関するアントロポゾフィー医学からの見解】 投稿日時: 2020年3月28日  より

一般のみなさまへ

世界中、日本中の新型コロナウイルス感染症で苦しんでおられる方々にお見舞い申し上げます。また同時に、最前線で日々奮闘されている同僚の医療従事者のみなさまに心からの敬意と感謝を申し上げます。

アントロポゾフィー医学の教育や広報を担う本部である、スイス・ドルナッハの精神科学自由大学医学セクションからの、新型コロナウイルスの最新の知見を踏まえたアントロポゾフィー医学的な一つの見解をみなさまにお伝えいたします。

「コロナ・パンデミックーいくつかの観点と展望」

ゲーテアヌム精神科学自由大学医学部門の共同代表、マティアス・ギルケとゲオルグ・ゾルトナーからの寄稿です。(トップページのメニューバー「医師会からの声明」内にあります。上のリンク、または下のPDFビューワーからご覧ください)

また、ドイツ・ベルリンにあるハーヴェルヘーエ病院で新型コロナウイルス外来を開設し、今まさに入院加療にも当たっているハラルド・マテス医師からの文章も以下に掲載いたします(原文<ドイツ語>はこちらです)。

私たちは、通常医療と同時に、補完的な医療としてのアントロポゾフィー医学を学び実践する医師の集まりですが、パンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症の今後の収束を願うとともに、健康生成的な側面にも目を向けたいと思います。

このような観点を求める方々に、この文章が届き、少しでも役に立つことができれば幸いです。

一般社団法人 日本アントロポゾフィー医学の医師会 代表 安達晴己

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時代を映す症状―自身の免疫で高齢者を守る

2020年3月18日

ハーヴェルヘーエ病院は、ベルリンで最初の病院のひとつとして、Covid-19の患者のためのコロナ外来を設置しました。ドイツ全土でまだ4千例に達していなかった3月中旬に院長のハラルト・マテス氏に話を聞きました。

ベルリンの現在の状況は?

ハラルト・マテス: 私たちの病院は、独立したコロナ外来で患者にウイルス検査を実施して必要な場合は治療をする6つの病院の中のひとつです。大変な数の感染を心配する人たちが殺到しています。そこで、私たちは次のことを決めました。患者には敷地内の隔離した専用の建物で対応することで、更なる感染の拡大の危険を回避するということです。Tagesschauの夕方のニュースでこの外来が紹介されました。さらに私たちは4〜6回線のホットラインを設置して、心配する人たちに最初のやりとりの中で助言を与え、その後、必要があればコロナ外来で検査を受けるようにお願いしています。ロベルト・コッホ研究所のガイドラインに従って、私たちはすでに症状を示している人しか検査することができません。ですから、南チロルから来た人や感染者と接触して、自分が健康かどうか確かめたいだけの人などは、最初からまったく来る必要はないのです。ほかの病院では、問い合わせのおよそ90%を占めるこのような人たちが押し寄せて、救急外来や急性期外来が塞がってしまっています。この電話ホットラインによって前もって選別することは非常に有用であることが明らかになりました。

(訳注:Tagesschau:ドイツ公共放送連盟ARDのニュース番組)

症例は増えているのか?

この前の月曜日に私たちの病院には130人の患者が来ました。そのうち54人を検査しました。シャリテー大学病院では100人を検査しました。翌日には322人から問い合わせがあり、そのうち外来受診したのは65人だけです。前もって相談することで、何らかの騒ぎが起こることを避け、全員が控室に集まってさらに感染が広がるということがなくなります。毎日私たちは危機対策本部に集まりますが、最初に相談ホットラインへとつなげることで、私たちは効果的に対処できているということが明らかになっています。検査陽性の全ての患者を隔離して、一人ひとりについて過去4〜7日間の接触者を聞き取ります。これは平均30人で、この人たちも同様に隔離されなければなりません。これまでのところコロナ外来において、私たちはこのように殺到する人々にうまく対処しています。より困難なのは、ベルリンの検査施設の検査能力です。最初は4〜8時間で結果が分かりましたが、現在は結果が分かるまで24時間以上待たなければなりません。

「私たちは病因論的な考えから健康生成論的な考えへと移行するべきでしょう。アントロポゾフィー医学ではとても馴染みのあるこの観点から見ると、とてもよいのは、まず若年の人々が感染して集団免疫を確立し、それによって最終的に高齢者を守るということです。」

ベルリンでは、防護せずに直接接触した病院職員に対しては隔離は中断されました。今はこれらの職員は常に適切なマスクをつけなければなりません。そのような職員たちは最初の日と5日目、10日目に感染の可能性に関して、または症状があるときに検査を受けます。そのようにして私たちは病院運営を良好に維持することができます。

今後数週間の状況はどのようになりそうか?

 これから感染者の数は指数関数的に増加するでしょう。そこで目指すのは、実のところ感染の拡大を防ぐことではありません。なぜなら、すでにお話ししたように、検査能力が限られているために、私たちはすでに症状がある人しか検査できないからです。しかし感染者の60〜80%は臨床的に無症状か軽症です。これらの感染者を私たちは全く把握していません。それは、感染拡大がさらに加速していくことを意味しています。コロナウイルス検査陽性の人の約14〜15%がより重い症状を示し、4〜6%は呼吸困難を訴え、肺炎の可能性があるので入院治療が必要です。感染者全体の1.7〜2.5%は人工呼吸器による治療が必要です。細菌性肺炎の場合は人工呼吸器による治療は平均5〜7日間必要ですが、コロナ感染の場合はその2〜3倍の日数が必要になります。近い将来に非常に困難な状況が出現します。私たちのハーヴェルヘーエ病院では人工呼吸器の数を2倍に増やしましたが、さらに最終的に3倍にまで増やすことができます。イタリアでの混乱は人工呼吸器の不足と関連しています。ここでも小さな病院には、わずかな受け入れ能力しかありません。このことがイタリアで死亡率を悲劇的に急上昇させています。

今何が行われなければならないのか?

私たちは急いで人工呼吸器の数を増やすことに投資しなければなりません。これは、打撃を受けている産業部門を援助することよりも現時点では重要であると私には思えます。思い切った対策をしてもCovid-19の拡大を防ぐことはできないことが分かっています。今や社会生活全体が抑え込まれています。集会における1000人という制限は抽象的な数字です。なぜなら、換気の悪い空間の50人は、スタジアムにおいて外気のもとで十分な距離をとった1000人よりも感染しやすいからです。そのような一般的な人数の制限にはあまり意味がありません。また、現在イタリア行われているような全土に対する隔離(移動制限)は、ここ(ドイツ)では本当の危機管理というよりも、むしろ行動のための行動のように思われます。隔離した場所でも感染はさらに増加します。子供と若者では死亡率は0.02%にすぎないことを私たちは知っています。高齢期になってはじめてこのウイルスは危険になるのです。つまり私たちはこの高齢期に全ての注意を向けるべきでしょう。これをリスク層別化法と呼んでいます。次のことを忘れないようにしましょう。ワクチンができるのは早くても1年かかりますので、パンデミックが収束するのは、人口の60〜70%が病気にかかって免疫を獲得したときになります。つまり現在重要なのは、高齢者とその世話をする人たちにマスクを供給すること、できるだけ多くの若い人々がウイルスに対する免疫をつけること、そうすることで、必要な70%以上の集団免疫を達成することです。したがって私は、幼稚園や学校を閉鎖するという現在の戦略は建設的ではないと思います。「リスクに適合した層別化」が完全に高齢者とその防御に向けられるべきでしょう。

どうしてこうした決定に至ったのか?

通常医学は相変わらず主に病因論によって導かれています。すなわち、私たちを病気にするもの、つまりウイルスを根絶しなければならないと。健康生成論的な観点から大事なのは、病気に対する免疫を育てることです。私たちは病因論的な考えから、健康生成論的な考えに移行すべきでしょう。アントロポゾフィー医学ではとても馴染みのあるこの観点から見ると、とてもよいのは、まず若者が感染して、集団免疫を作り上げ、それによって最終的に高齢者を守るということです。多くの予防接種の議論で提示されるものが、ここでも手がかりになります。パニックを煽る行為(メディアによるものも)は、感染しても大抵の場合全く自覚しない若者たちですら不安になり、ヒステリックになるまでの規模に達しています。自らをとても合理的で冷静であるとしている通常医学が、ここではパニック的、感情的に反応しています。このこと自体が皮肉を含んでいます。この高度なストレス状況においても、私たちの病院の職員たちが良好でポシティブな雰囲気を維持しているのは、私にとっては驚くことではありません。彼らは、健康生成論的な人間像と病因論的な人間像とに等しく馴染んでいます。そしてそのことが状況を真剣に捉えつつ、同時に自信を持って、強さを保つために役立っています。

追記: 3月22日20時のARDのTagesschauの中で、ハラルト・マテス氏はこの3月18日の解説に補足して、検査陽性者の厳格な隔離を勧めています。特にリスクのある人たちを守ることが重要であり、同時に、コロナの検査陽性者は、ウイルスに対する免疫防御が形成されて、もはや感染させることがないようになるまで隔離されるべきです。

(小林國力 訳)


http://j-paam.org/ 【アントロポゾフィー医学とは】

アントロポゾフィー医学は、ルドルフ・シュタイナー博士によって始められたアントロポゾフィーを基盤として、イタ・ヴェーグマン医師(1876~1943)の協力の下に創始されました。ドイツを中心に、現在では60以上の国々で実践され、20,000人以上の医師や8,000人近い各種療法家(芸術療法士、看護師、治療教育家など)が、この医療に携わっており、日本でも実践されています。

アントロポゾフィー医学では、人間を身体、心、精神の統合された全体性として捉え、各個人の生き生きとしたあり方を尊重します。

それは従来の医学を否定するものではなく、それらを補完しながらホリスティックなアプローチで拡張します。

アントロポゾフィー医学のコンセプト

人間の生体内では、さまざまなプロセスが行われています。それらは《病的なもの》及び《健康的なもの》に分けられます。これらのプロセスの理解を進め、治療に役立てていきます。これらのプロセスのうち、どれが問題になっているのかを知るためには、その患者の身体的側面、心理的側面、精神的・社会的側面の全体を考察していく必要があります。

アントロポゾフィー医学では、自然科学的なアプローチに加え、シュタイナーの思想を基にした精神科学的アプローチを行います。そのことで病を抱えた各人の全体を認識し、身体で起きているプロセスと精神に起きているプロセスとの関連性を考え、その両方へのケアを行います。

統合医療としてのアントロポゾフィー医学

アントロポゾフィー医学の治療は、自然科学的な基礎に基づき、現代医学の有用な知識、技術や薬品すべてを用いるだけではなく、精神科学に根ざした人間像から導かれた独特の治療方法によって補います。それには、自然由来の薬品、ならびに、入浴、湿布や特別な(リズム)マッサージを用いた特定の理学的、看護的な療法、さらに造形、線描、絵画、音楽療法、オイリュトミー療法などが含まれます。

すべての芸術的治療方法の目的は、患者本人が治療者の指導のもとで自己治癒のプロセスを呼び起こし、この自己能動的で創造的な行為を通して健康になることにあります。

< アントロポゾフィー医学の創始者たち >

ルドルフ・シュタイナー Rudolf Steiner, 1861 – 1925

クラリェヴェクで生まれ、オーストリアやドイツ、スイスで活動した哲学者、神秘思想家、教育者。ゲーテの研究(とくに形態学などの自然科学論)や美学史研究ののち、アントロポゾフィー(人智学)という精神運動を創立した。その思想は、心理学者のユング、芸術家のパウル・クレーやカンディンスキーなどにも影響を与えたとされる。また、シュタイナーの人間観をもとにしたヴァルドルフ

教育は、日本国内でも多くの教育現場で実践されている。

このように医学だけでなく、教育、芸術、社会運動、自然

科学、農業など、影響は多岐にわたる。

イタ・ヴェーグマン Ita Wegman, 1876 – 1943

クラヴァンス(インドネシア)でオランダ人植民二世として生まれる。世紀の変わり目にヨーロッパに戻り、29歳のときにシュタイナーと出会った。その後、アントロポゾフィー運動に精力的に携わりながら、チューリッヒ大学で学び、1911年に医師免許を取得。1921年にアントロポゾフィー医学を実践するクリニックをアーレスハイム(スイス)に設立した。イタ・ヴェーグマン・クリニックは現在アーレスハイム・クリニック(Klinik Arlesheim)として幅

広く地域の医療に貢献している。

<アントロポゾフィー医学を呼称する、または似た名称の療法について>

なお、最近、所定の資格や国際的基準によるアントロポゾフィー医学のトレーニングを受けることなく「シュタイナー(式)~療法(セラピー)」や「アントロポゾフィー医学」「アントロポゾフィー療法」を呼称する療法などが見受けられますが、当医師会は一切それらの療法とは関係ありません。

アントロポゾフィー医学自体は、書籍もあり、どなたでも学びご自身の生活の中で意識することのできるものではありますが、病気や障害を持つ人に対しその治療を目的として療法を行うことには、法的、社会的および倫理的責任を伴います。

国際的な基準では、アントロポゾフィー医学の療法を、病気の人への治療として行う際は、医師の指示と協働を前提として多職種がそれぞれの専門性を発揮して行うことが求められています。

上記の資格を持っていない、もしくは所定のトレーニングを受けていない施療者が行う療法は、国際的に認められたアントロポゾフィー医学の療法ではありませんのでご注意ください。

また、国際的に認められたアントロポゾフィー医学を実践する医療者が、個人で資格の認定・発行を行うことはありません。


コズミックホリステック医療 俳句療法

吾であり・宇宙である☆和して同せず☆競争ではなく共生を☆

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