疫病・免疫療法

https://courrier.jp/news/archives/87912/?ate_cookie=1589098954

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/07-%E8%82%BA%E3%81%A8%E6%B0%97%E9%81%93%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%BA%E7%82%8E/%E6%98%93%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%82%BA%E7%82%8E

【易感染状態にある人の肺炎】

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/SearchResults?query=%e6%98%93%e6%84%9f%e6%9f%93%e7%8a%b6%e6%85%8b%e3%81%ab%e3%81%82%e3%82%8b%e4%ba%ba%e3%81%ae%e8%82%ba%e7%82%8e&icd9=486%3b136.3%3b482%3b485%3b484.6%3b484.7  【プロフェッショナル版】

肺炎は肺の感染症です。免疫機能が低下している人または免疫系に異常がある人(例えば、エイズ、がん、臓器移植、特定の薬剤の使用による)では、しばしば、健康な人とは異なる原因微生物によって肺炎が引き起こされます。

免疫機能が低下していると、健康な人にはほとんど病気を引き起こすことのない微生物が原因で肺炎が発生することがあります。

その症状は多様ですが、息切れ、せき、発熱などがあります。

しばしば胸部X線検査と、たんや血液のサンプルを調べる検査とを組み合わせて、診断が下されます。

この肺炎の治療には、抗菌薬または抗真菌薬もしくは抗ウイルス薬が用いられ、免疫系に異常があればそれも治療します。

易感染状態にある人とは、免疫系の機能が弱いまたは障害されている人です。人体は免疫システム(免疫系)によって感染症の原因となる微生物から守られています。

免疫機能が低下している患者では、通常は肺炎の原因とはならないものを含め、多くの微生物によって肺炎が引き起こされることがあります。免疫系を弱める条件は、以下のものを含め、数多くあります。

がんやがんの治療に用いられる化学療法の薬剤

白血球の欠陥

エイズなどの病気

一部の薬剤(コルチコステロイド、化学療法の薬剤、自己免疫疾患または結合組織疾患の治療に用いられる薬剤など)

(肺炎の概要も参照のこと。)

原因

免疫機能が低下している患者では、肺炎が市中肺炎を引き起こす微生物と同じ微生物によって発生することもありますが、他のまれな微生物が原因となることもあります。

ニューモシスチス・イロベチイ Pneumocystis jirovecii は、健康な人の肺の中では害を及ぼすことなく生存しているありふれた真菌です。この真菌が肺炎を起こすのは、通常はエイズ、臓器移植、がん、免疫系を弱める薬剤の使用などによって、体の防御機能が低下した場合に限られます。多くの場合、ニューモシスチス(P. jirovecii)肺炎は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者がエイズを発症したことを示す最初の徴候です。

免疫機能が低下している人は、アスペルギルスやカンジダなどの真菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などの細菌、サイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルス などのウイルスにより、肺炎になることがあります。

症状

免疫機能が低下している人の肺炎の症状は、市中肺炎の症状と同じで、具体的には以下のものがあります。

全身のだるさ(けん怠感)

たん(粘り気が強いまたは変色した粘液)がからんだせき

息切れ

発熱

悪寒

胸痛

症状は急速に現れることもあれば徐々に現れることもあります。

ニューモシスチス(P. jirovecii)肺炎の患者のほとんどに、発熱、息切れ、乾いたせきがみられ、多くの場合これらの症状が徐々に発生します。肺が血液に十分な酸素を供給できなくなって、息切れをきたすことがあり、ときには重症化します。

診断

胸部X線検査

たん(粘り気が強いまたは変色した粘液)のサンプルを顕微鏡で調べる

血液培養検査

パルスオキシメトリー

免疫機能が低下している人の肺炎の診断は、症状、胸部X線検査またはCT検査の結果、たんと血液の検査の結果に基づいて下されます。

胸部X線検査では異常が示されないこともあれば、感染症の徴候がみられることもあります。

たんのサンプルを採取するために、医師は蒸気を吸入させて深いせきをさせたり(これによりたんが出やすくなります)、気管支鏡(カメラの付いた柔軟な細い管状の機器)を気道に挿入したりすることがあります。せきを誘発させて採取したたんのサンプルや、特に気管支鏡により採取したサンプルは、唾液を含んでいる可能性が低く、自発的に吐き出したたんのサンプルよりも肺炎の原因微生物をはるかに特定しやすくなります。

医師は通常は血液サンプルを採取し、検査室で細菌を増殖させる検査(培養検査)と病原体の特定を試みます。

免疫機能が低下している人は、血中の酸素濃度が低いことがあります。医師は、指や耳たぶにセンサーを取り付けることで、血液サンプルを採取せずに血液中の酸素レベルを測定できます。この検査で使用する機器はパルスオキシメーターと呼ばれます。

予後(経過の見通し)

治療を行った場合でも、全般的に元気な市中肺炎患者に比べると全体の死亡率は高く、その理由として、免疫系に異常がある患者では感染症の治療が難しいことや、このような人たちは肺炎を発症する前から健康状態が悪いことなどが挙げられます。

ニューモシスチス(P. jirovecii)肺炎患者の死亡率は高いです。

予防

医師はしばしば、免疫系を強化する治療や、肺炎を予防する治療を行います。例えば、がんの治療により免疫機能が低下している患者には、顆粒球コロニー刺激因子と呼ばれる薬剤を投与して、白血球(感染に対する防御を担う細胞)の産生を促すことがあります。

細菌に引き起こされる肺炎にかかるリスクがある患者には、肺炎球菌やインフルエンザ菌に対するワクチンを接種します。

ニューモシスチス(P. jirovecii)肺炎のリスクが高い人には、トリメトプリム/スルファメトキサゾール配合剤(ST合剤)という2種類の抗菌薬を配合した薬剤を予防に使うことができます。この薬剤の副作用には、発疹、感染防御を担う白血球数の減少、発熱などがあり、特にエイズ患者によくみられます。他の予防薬としてジアフェニルスルホンまたはペンタミジンがあります。

治療

抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬

免疫系に異常があれば治療する

肺炎の治療法は以下の要素に応じて異なります。

具体的な免疫系の異常

病気の重症度

原因の可能性がある微生物

医師は通常、多くの細菌に効果がある抗菌薬(広域抗菌薬)を投与します。それでも患者の状態が改善しない場合は、ウイルスまたは真菌に対して効果のある薬剤を追加することがあります。

免疫系に異常がある人では、肺炎を治療する上で、免疫系を改善する治療も重要です。免疫系を抑制する薬(化学療法の薬剤や、自己免疫疾患の治療薬など)は、感染症が治癒するまで、一時的に中止する必要があります。

ニューモシスチス(P. jirovecii)肺炎の患者には、トリメトプリム/スルファメトキサゾールという抗菌薬の配合剤が投与されます。代替薬はジアフェニルスルホン、アトバコン、クリンダマイシン、ペンタミジンです。また、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドを投与することもあります。



https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html

【免疫療法 もっと詳しく知りたい方へ】


https://www.jst.go.jp/pr/announce/20070322/index.html

【免疫反応を調節するT細胞のはたらきを分子レベルで解明(免疫疾患の発症機構解明と新しい治療法開発に光)】

JST(理事長 沖村 憲樹)と京都大学(総長 尾池和夫)は、国立がんセンター研究所(所長 廣橋説雄)らのグループと共同で、制御性T細胞(注1)による免疫応答制御の鍵となるメカニズムを分子レベルで明らかにしました。

 制御性T細胞とは、様々な免疫反応を抑制する方向に導く特別なリンパ球であり、正常な免疫機能の維持に機能する必要不可欠な細胞です。このT細胞は、自己免疫病やアレルギーといった過剰な免疫反応を抑制する一方で、腫瘍に対する有益な免疫反応も抑制してしまうことが知られています。あるいは、臓器移植において制御性T細胞の増殖、機能を強化することで拒絶反応を抑え臓器を生着しやすいようにすることができます。このことから、制御性T細胞の機能を操作する方法の開発は、免疫疾患やがんに対する新しい治療法につながると期待されていますが、制御性T細胞による免疫反応抑制のメカニズムについてはほとんど分かっていませんでした。

 本研究チームは、制御性T細胞に特異的に発現しているタンパク質Foxp3が、T細胞の機能に不可欠なタンパク質であるAML1に結合することにより免疫反応を抑制していること、さらに、Foxp3はAML1と結合することで、免疫応答を増幅する主要なサイトカイン(注2)であるインターロイキン2(注3)の遺伝子発現を制御していることを解明しました。今回の研究により、AML1とFoxp3の相互作用が、制御性T細胞による免疫応答調節において中心的なメカニズムであることが示され、Foxp3とAML1の相互作用に干渉することで、制御性T細胞を自在にコントロールできる可能性が開けました。この発見は、これまで謎が多かった、自己免疫・アレルギー疾患の発症メカニズムの解明に貢献するのみならず、免疫疾患の治療や、臓器移植における免疫抑制、腫瘍に対する免疫反応の活性化によるがん治療など、新しい創薬の基礎となることが期待されます。

 本成果は、JST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「免疫難病・感染症等の先進医療技術」研究領域(研究総括:岸本忠三)の研究テーマ「制御性T細胞による免疫制御法の開発(研究代表者・坂口志文(京都大学再生医科学研究所 教授)および塚田俊彦(国立がんセンター研究所 プロジェクトリーダー)らの共同研究グループの一環として行われています。今回の研究成果は、2007年3月21日(英国時間)発行の英国科学雑誌「Nature」オンライン版に一般公開されます。

<研究の背景>

 身体の中にある免疫系は、生体へ侵襲しようとする様々な微生物、異物を認識し排除するための免疫機能を備えていますが、その機能が適切に制御されないと、自分の細胞や病原性のない花粉などまで過剰に排除しようとしてしまいます。そのため、正常な免疫系は、こうした過剰な免疫反応によってひきおこされる自己免疫疾患・アレルギー性疾患が発症しないようにするために、特別な制御機構を備えています。

 制御性T細胞とは様々な免疫反応を抑制的に調節する機能に特化した特異なリンパ球で、正常な免疫機能の維持に機能する必要不可欠な細胞です。制御性T細胞は、自己免疫病やアレルギーなどの過剰な免疫反応を抑制する一方で、腫瘍免疫などの有益な免疫反応も抑制してしまうことが知られています。もし、制御性T細胞のはたらきを人為的に強めることができれば、自己免疫反応、アレルギーなどの有害な免疫反応を抑えられると考えられます。また、逆にがん患者の制御性T細胞のはたらきを弱めることができれば、腫瘍に対して有益な免疫反応を引きだすことにより、がんの効果的な治療ができると予想されていました(図1)。しかしこれまでの研究では制御性T細胞による免疫反応抑制の分子レベルでのメカニズムについてはほとんど分かっていませんでした。

<研究成果の内容>

 本研究チームは、免疫制御のメカニズムを分子レベルで解明するために、免疫制御の鍵となる遺伝子の動作メカニズムを解析しました。様々な遺伝子のはたらきは、DNAからmRNAへの転写を制御する領域に特異的に結合して遺伝子の発現量を調整するタンパク質(転写因子)によって制御されています。そこで、本研究チームは、免疫反応をひきおこすサイトカイン(情報伝達物質)であるインターロイキン2遺伝子の、転写因子による制御メカニズムに注目して研究を始めました。その結果、インターロイキン2の発現を制御する遺伝子領域に転写因子AML1が結合し、インターロイキン2の発現を調節していることが分かりました。実際に、通常のT細胞において、転写因子AML1の発現量を減らしたところ、インターロイキン2の発現量もそれに伴って減少しており、AML1がインターロイキン2の発現に必要な因子であることが解明されました(図2)。すなわち、通常のT細胞が免疫反応をひきおこすためには、AML1が必要であることが判明しました。

 次に、免疫反応を抑制するはたらきをもつ制御性T細胞において、AML1の機能がどのようになっているかを調べました。通常のT細胞とは対照的に、AML1は制御性T細胞においては、インターロイキン2の発現量を増加させられませんでした。このことは、制御性T細胞においてのみ発現する転写因子であるFoxp3とAML1とのあいだに何らかの相互作用があることを示唆しています。さらに解析をすすめた結果、Foxp3がAML1と物理的に結合すること(図3)、さらに、制御性T細胞においては、Foxp3とAML1の相互作用により、インターロイキン2の発現制御が行われていることを明らかにしました(図4)。また、AML1と結合できない変異型Foxp3をもつ細胞は、制御性T細胞の機能を発揮できないことが分かりました。実際に、制御性T細胞内でのAML1の発現を減らすことで、制御性T細胞の機能が弱まりました(図5)。このことは、制御性T細胞が免疫反応を抑制する分子メカニズムが、転写因子Foxp3と転写因子AML1の相互作用に基づいていることを意味します。

 以上の研究により、転写因子AML1は通常のT細胞において、免疫反応をひきおこすために必要な遺伝子を制御しており、制御性T細胞においては、AML1は転写因子Foxp3と結合し複合体を形成することで、免疫反応を抑制するために必要な遺伝子を制御していることが判明しました。

<今後の展開>

 今回の研究で、制御性T細胞の抑制メカニズムの鍵と言える分子メカニズムを明らかにしました。医療への応用という観点からは、Foxp3とAML1の相互作用に干渉することにより、制御性T細胞を自在にコントロールできる可能性が開けました。この発見は、これまで謎が多かった自己免疫・アレルギー疾患の発症メカニズムを解明することに貢献するのみならず、様々な免疫疾患の新しい治療薬の創薬や、腫瘍に対する免疫反応を高める作用を持つ新しいがんの治療薬、新しい免疫抑制剤の開発に繋がることが期待されます。

(略)


https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/33433

【過剰な免疫反応を抑えるための新たなブレーキ制御メカニズムの発見】 より

概要

沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村 学長ピーター・グルース)免疫シグナルユニットの小泉真一研究員らは、免疫システムの恒常性を保つために必要な新たな分子メカニズムを明らかにしました。研究チームは、転写因子※1「JunB」が免疫反応のブレーキとして働く制御性T細胞※2の免疫抑制機能を促進することを発見しました。また、このJunBによって促進される制御性T細胞の機能は、肺および大腸の過剰な炎症を抑制するために必要であることがわかりました。したがって、制御性T細胞のJunBをターゲットに特定の臓器における炎症を調節することは、自己免疫疾患※3・アレルギー疾患の治療だけでなく効果的ながん免疫療法※4の開発へとつながる可能性があります。制御性T細胞のJunBの役割を初めて明らかにした本研究成果は、2018年12月17日発行の英科学誌 Nature Communications に掲載されました。

研究の背景と経緯

免疫システムは細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞の排除に重要な役割を果たします。しかしながら、免疫システムが正常に働かなくなると過剰な免疫反応が自己の細胞や組織に向けられ、その結果、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および多発性硬化症といった自己免疫疾患を引き起こします。また、花粉などの特に害のない物質に対する免疫応答はアレルギー疾患の原因となります。

過剰な免疫反応を回避するために、免疫システムはブレーキの役割をはたすメカニズムをいくつか備えています。例えば、本年ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授と米テキサス大学のジェームズ・P・アリソン教授が発見した免疫チェックポイント分子※5PD1とCTLA4は、過剰な免疫反応を抑える重要なメカニズムです。これらに加えて、免役抑制機能をもつ制御性T細胞も自己免疫疾患やアレルギー疾患を防ぐために必須な役割を担います。一方、制御性T細胞が過度に働くと、がん細胞に対する免疫を抑制してしまいます。したがって、状況に応じて制御性T細胞の機能を適切に制御することで、自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療だけでなく、効果的かつ副作用の少ないがん免疫療法が可能になると考えられます。しかしながら、制御性T細胞の免疫抑制機能を制御するメカニズムはまだ十分に解明されていません。

研究内容

制御性T細胞が正常に機能するためには、リンパ節などリンパ系組織に存在するナイーブ型の制御性T細胞※6が、様々な非リンパ系の臓器に移動し、強力な免疫抑制機能を示すエフェクター型の制御性T細胞※7へと分化する必要があります。研究チームは、エフェクター型の制御性T細胞の分化および機能を制御するメカニズムを理解するために、JunBという転写因子に注目しました。同チームは昨年JunBが自己免疫疾患を引き起こすヘルパーT細胞※8の機能を調節することを報告しましたが、制御性T細胞におけるJunBの機能は分かっていませんでした。

まず、研究チームはJunBが制御性T細胞集団のなかでナイーブ型ではなくエフェクター型の細胞においてのみ発現することを見出しました。次に、制御性T細胞のJunBの機能を明らかにするために、この細胞集団においてJunBを欠損するマウスを作製しました。作製したマウスは正常に生まれましたが、生後4週間には顕著な体重減少を示し、生後24週までに半数以上のマウスが死亡しました。これらのマウスの肺と大腸においては激しい炎症が見られましたが、皮膚と肝臓ではそのような炎症は認められませんでした。

JunBの欠損が制御性T細胞へ与える影響を調べたところ、JunBはエフェクター型の制御性T細胞の分化には必要ありませんでしたが、その細胞数の維持、大腸への蓄積、および免疫抑制機能の亢進のために重要であることが明らかになりました。さらに、JunBの欠損により発現が変動する遺伝子を網羅的に解析したところ、免疫チェックポイント分子CTLA4を含むいくつかの免疫抑制機能をもつ分子の発現がJunBによって制御されることが明らかになりました。しかしながら、エフェクター型の制御性T細胞で高く発現する多くの遺伝子はJunBに依存せずに発現することも確認されました。これらの結果は、JunBはエフェクター型の制御性T細胞の特定の機能を促進することで、肺および大腸の炎症を抑制することを示唆しています。

今回の研究成果のインパクト・今後の展開

今回の研究成果は、転写因子JunBがエフェクター型の制御性T細胞の機能を調節し、肺と大腸の炎症の抑制に重要な役割を果たすことを明らかにしました(図3)。このような役割はこれまでに報告されている制御性T細胞の分化および機能制御に関わる転写因子では見られていないユニークなものです。小泉博士は「制御性T細胞のJunBの活性を高めることは、自己免疫疾患やアレルギー疾患の新たな治療法となると期待されます。逆に、制御性T細胞のJunBの活性を抑えることで肺がんや大腸がんに対する免疫を特異的に促進し、他の組織への副作用の少ない新たながん免疫療法の開発につながる可能性もあります」と、述べています。

用語説明

※1 転写因子

特定の遺伝子群の発現を制御する因子。様々な細胞機能に関わる。

※2制御性T細胞

成熟したT細胞(リンパ球)の一種で、ヒトの遺伝性免疫疾患の原因とされる転写因子Foxp3の発現を特徴とする。免疫抑制機能を持ち、免疫の恒常性の維持に必須な役割を果たす。

※3自己免疫疾患

自己の身体を構成する物質に対しておこる免疫反応により発生する疾患。関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスなどがある。それらの多くは特定疾患に指定される難病で、国内では年々増えている(難病情報センター特定疾患医療受給者証所持者数http://www.nanbyou.or.jp/entry/1356)。

※4がん免疫療法

免疫システムを利用してがんを治す治療法。

※5免疫チェックポイント分子

過剰な免疫応答を抑制する機能を持つ分子。免疫チェックポイントを阻害することで効果的ながん免疫を誘導することができる。

※6ナイーブ型の制御性T細胞

リンパ系の組織に存在する、抗原と反応したことがない制御性T細胞。

※7エフェクター型の制御性T細胞

ナイーブ型制御性T細胞が抗原と反応することで活性化した制御性T細胞。様々な臓器に蓄積し、強い免疫抑制機能を持つ。

※8ヘルパーT細胞

成熟したT細胞(リンパ球)の一種。免疫反応を指揮する役割を果たす。




コズミックホリステック医療 俳句療法

吾であり・宇宙である☆和して同せず☆競争ではなく共生を☆

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