https://www.seirogan.co.jp/fun/infection-control/influenza/mutation.html
【インフルエンザ HOW TO マニュアル 変異するインフルエンザウイルス】 より
インフルエンザウイルスは自分の力では増殖することができず、他の生物に感染し、感染した細胞の中で自分の遺伝子のコピーを作り増殖していきます。その結果、インフルエンザウイルスに感染したほとんどの細胞は死滅してしまいます。
また、インフルエンザウイルスの遺伝子はRNA(人の遺伝子はDNA)という遺伝子で、このRNAは誤ったコピーが発生しやすく、これを変異といいます。
インフルエンザウイルスは常にこの変異が起こっており、人の1000倍の確率で起こっているといわれています。さらに、増殖スピードは速く、1個のウイルスは1日で100万個以上に増殖します。インフルエンザウイルスは常に変異と増殖を繰り返して、徐々にマイナーチェンジしながら生き延びています。
一度、インフルエンザにかかったのに、何度でもかかることがあるのは、このように変異したインフルエ ンザウイルスに感染しているからです。
通常はマイナーチェンジだけの変異が、数十年に一度、フルモデルチェンジの変異を起こすことがあります。今まで鳥だけに感染していた鳥インフルエンザウイルスが、このフルモデルチェンジの変異で人に感染するようになり、さらに人から人に効率よく感染するように変化したのが、新型インフルエンザウイルスなのです。
新型インフルエンザの大流行(パンデミック)が起こり、ほとんどの人が新型インフルエンザウイルスに感染してしまうと、季節性のインフルエンザとなってマイナーチェンジを繰り返して生き延びてきます。
インフルエンザの主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。また、空気感染による感染も否定できません。
飛沫感染
感染した人が咳やくしゃみをすることで排泄する、ウイルスを含む飛沫(0.005mm以上の水滴)が飛散し、これを健康な人が鼻や口から吸い込み、ウイルスを含んだ飛沫が粘膜に接触することによって感染する経路。
接触感染
皮膚と粘膜・創の直接的な接触、あるいは中間物を介する間接的な接触による感染経路。
空気感染
空気感染とは、飛沫の水分が蒸発して乾燥し、さらに小さな粒子 (0.005mm以下)である飛沫核となって、空気中を漂い、離れた場所にいる人がこれを吸い込むことに よって感染する経路。飛沫核は空気中に長時間浮遊するため、対策としては特殊な換気システム(陰圧室 など)やフィルターが必要になります。
新型インフルエンザ対策ガイドライン(平成21年2月17日、新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議)においては、新型インフルエンザの空気感染について「空気感染の可能性は否定できないが、一般的に起きるとする科学的根拠がない」とされています。
パンデミックを起こす新型インフルエンザ
新型インフルエンザウイルスとは人が今まで経験したことのない亜型のインフルエンザウイルスが、鳥や他 の哺乳動物から感染し、人の体内で増殖できるようになり、人から人へ効率よく感染できるようになったイ ンフルエンザウイルスのことです。
感染症に対する人体の防御機能として、さまざまな免疫機能があり、異物の侵入を防いでいます。感染症を治したり、 一度感染したことのある病原体に対しては、免疫機能が働き感染しないか、感染したとしても軽症ですみます。
しかし、新型インフルエンザウイルスに対して人類は免疫(抵抗力)を持たないため、ほとんどの人が感染 する可能性があると推測されます。感染が急速に拡大し、パンデミックを引き起こすのです。
季節性のインフルエンザウイルスと新型インフルエンザ
20世紀に起こった新型インフルエンザでは、1918年のスペイン・インフルエンザ(通称「スペインかぜ」) では全世界人口の25~30%が発症し約4000万人が死亡、1957年のアジア・インフルエンザ(通称「アジアか ぜ」)では200万人が死亡、1968年の香港・インフルエンザ(通称「香港かぜ」)では100万人が死亡したと 推計されています。
このように、新型インフルエンザは10年から40年の周期で起こるといわれており、大流行の可能性が危惧されていたところ、2009年新型インフルエンザ(A/H1N1型)が発生しました。2010年8月には、世界保健機構(WHO)からパンミック終息宣言されたものの、いまだ流行は続いています。 さらに、1997年以来、H5N1型高病原性鳥インフルエンザの人への感染が拡大しており、未曾有の健康被害をもたらす新たな新型インフルエンザ大 流行の可能性が危惧されています。
病原性別 新型インフルエンザの違い
新型インフルエンザは、病原となるインフルエンザウイルスによって病原性の強さが異なります。
過去130年の間に起こった新型インフルエンザ [スペイン・インフルエンザ(通称「スペインかぜ」)、アジア・インフルエンザ(通称「アジアかぜ」)、香港・インフルエンザ(通称「香港かぜ」)、2009年新型インフルエンザ(A/H1N1型)] は、すべて弱毒型インフルエンザウイルスによるもので、病原性は低いものでした。
2009年に発生した新型インフルエンザは、ほとんどの人(一部の基礎疾患者、妊婦、乳幼児、高齢者などのハイリスク者を除く)が軽症で回復するという季節性のインフルエンザ並みのもので、軽度に分類されます。致死率が約0.5%のアジア・インフルエンザは中度、さらに致死率が高い(約2%)のスペイン・インフルエンザは強度に分類されます。弱毒型の新型インフルエンザは、新型インフルエンザウイルスが呼吸器や腸管にのみ感染します。
強毒型の新型インフルエンザは、まだ大流行したことはありません。しかし、現在、鳥の間でH5N1型高病原性鳥インフルエンザの流行が拡大しており、非常に病原性が高いことが知られています。毎年、人への感染も報告されていて、このH5N1型鳥インフルエンザウイルスが新型インフルエンザウイルスに変異する可能性が高いといわれています。この場合には、致死率が、弱毒性の過去のパンデミックより高くなると考えられます。
病原性によって新型インフルエンザの症状や致死率が異なるため、病原性別に感染対策が必要となります。
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