人だけにある幸不幸草萌ゆる 木暮陶句郎
風鈴に風が砕けてをりにけり 同
榾火燃ゆオンザロックの氷にも 同
http://www.chabashira.co.jp/~tomosan/05050800.html 【ほだ火】
~ ほだ火よもえろ 榾火よ燃えろ 悲しみも楽しみも 静かにもえろ わが友 榾火
語ろう お前の炎 消ゆるまで ~
・・ 登山家・吉野満彦の詩である。
竿納めの儀式を兼ねてやってきた。
釣果に不満は残るけれど、久方ぶりに、寸又の谷が堪能できて満足だった。
榾火は軽ろやかに燃えている。
煙が少ないのは、お天気つづきで、流木が芯まで乾いているからだろう。
久しく味わうことのなかった、四肢の疲労感が心地よい。
えも云われぬ幸福感に浸りながら、燃えさかる炎に見入っていた。
それにしても、何という優しさだ。
眩しくないから、じっと見ていても飽きることがない。
人工の光に慣れっこの眼球には、癒しの光といっても過言ではないだろう。
榾火には“ボソボソ”と、呟くような物言いがお似合いである。
ときに寡黙に、自問自答だっていい、会話がなくても十分に楽しいのだから。
便利に馴れて、火を燃やすことは非日常になったけれど・・
小ぶりの木切れを選んで、一本足した。
榾木を燃すから“榾火”という。
榾木といえばシイタケ栽培で有名だが、木ッ端の総称であって、樹種を選ばずそう呼ぶそうな。
薪炭が燃料だった時代には、榾火に限らず、優しい光に満ちていた。
http://www.sakebunka.co.jp/archive/others/005_2.htm 【お酒で身体はどう変わるのか】
3.ポリフェノールのこと
お酒を一日一合くらい飲む人は、全然お酒を飲まない人より長生きである。しかし大酒を飲んでいる人は寿命が短いという。だから飲酒量と平均寿命のカーブを描くと、一日一合くらいが最低値のJ型の曲線になるという。
この場合、もっとも効いてくるのが脳卒中や心筋梗塞のような血管系の病気である。こういった病気になるかならないかという点で、平均寿命が違ってくるのである。
飲酒者とくにポリフェノールを含むアルコール類を、清酒換算で一日一合程度飲んでいると、アルコールに溶けていたポリフェノールが身体の中に入り込み、その抗酸化作用によって身体が健康になるのである。
なお私がとくに推奨する抗酸化性のアルコール飲料は、コクがある赤ワインと本格焼酎である。沖縄の泉重千代さんは一一八歳までの長寿記録の保持者であったが、彼はいつも泡盛を飲んでいたそうである。
ポリフェノールのような抗酸化物質が、なぜ出来てくるのだろう。かんたんに言うと、植物は太陽光線の中にある紫外線からおのれを守るため、苦し紛れにいろいろな物質を作り出す。その物質によって、いったん紫外線によって変化したDNA配列が復元されるのである。
人間では、夜間ねているときに分泌される成長ホルモンが、修復の役割を受け持っている。植物ではビタミン類やその他の物質が、紫外線による傷害からおのれを守っているのである。いろいろな物質が出来てくるが、総じて抗酸化作用である(ビタミンC、Eなど)。われわれ自身には、そういったビタミンを作る能力はないから、栄養豊富な物質を食べて、抗酸化能力を身に付け、紫外線の害を受けないようにしているわけだ。
紫外線のほかにDNAを傷つけ変異させるものは、タバコの煙中のベンツピレン、ディーゼルエンジンの排気ガスなどである。しかもこういった因子の複合汚染によって、飛躍的に変異の確率が上昇するのである。
いわゆる悪玉コレステロールは、一種の清掃業(スカベンジャーと言ってよい)を行っている。それと関係するのが、血液中の貪食細胞(白血球の仲間、マクロファージなど)である。ただしこの細胞は、活性酸素が存在しているときは、血管壁の中に死滅した組織をくわえて潜り込む。そうするとやがて血管壁はボコボコになる(粥状硬化症)。だが、活性酸素がない条件では、そういったことはしない。活性酸素が抗酸化物質で減っていると、動脈硬化症にはなりにくいのである。
4.ビールと健康
夏のビールは格別である。ゴルフで干からびきった身体にビールがしみわたり、水分が細胞の末端まで行きわたるような気になる。だが、それは錯覚でもある。多くの人は、ビールを飲んですぐトイレに行くが、それはビールの利尿作用による。ある研究によると、ビールを飲んだとき、身体に入る水の量よりも、尿として排泄される量のほうが多く、むしろ脱水状態になるとのことである。
とすると、夏の紫外線で皮膚が火ぶくれになったときには血液の粘ばり気がまし、血圧が上ってしまう。ゴルフで昼飯時にビールを飲めば、ときには循環器系の発作が発病するキッカケになりかねない。私は、プレイ中にはむしろスポーツドリンクをお勧めしたい。水分と電解質が補給されるからだ。
ビールにはプリン体が含まれるから、痛風に悪いと言われる。昔、腎臓結石を溶かすため、利尿作用があるビールを飲むことが勧められた。だが、尿酸は身体が酸性のときは、むしろ溶解度が下がる。つまり石が溶けるよりも折出するほうが多くなり、あまり有効でないということになっている。ビールを飲んで結石を治そうとした友人がいたが、結石はあまりよくならず、たんなるビール飲みになってしまった。
尿酸値が高くて痛風がらみの人は、例えばワインなどのアルカリ性の飲料がお勧めである。次にはビールの泡を問題にせねばなるまい。ビールを飲むときは、細かい絹のような泡が一杯立つようにして、中の香りが空気で劣化しないよう閉じ込めておくのがよい飲み方だとされる。泡が立たない気が抜けたビールは誰だって飲みたくはないだろう。またこの泡が胃の表面を洗うことが、じかに物の味を感じさせるのである。アルコールによる食欲増進作用(血糖降下が関係する)も、爽快感を増幅する。ただ胃袋が洗われると、粘液ヌルヌルによる胃壁への保護作用が失われてしまう。よっぽど胃が強い人は例外として、ビールを飲んで胃を悪くしたという人は意外に多い。胃のためには、例えばホットウイスキーのミルク割りなどのほうがよいと思っている。もっともこれは、私だけの意見かも知れないが。
5.アルコール依存症
お酒がクセになることは誰もが知っている。飲むと気持ちがよくなって幸福感に満たされる。だからまた、ということなのだ。まったくの下戸は、飲むと悪酔いしてさまざまな症状で苦しむから、依存症にはなり難い。アルコールをアセトアルデヒドにまで分解する酵素は誰も持っているが、それを酢酸と炭酸ガスに分解する酵素を作らせる遺伝子は、メンデル遺伝をするという。
だからヘテロでDNAを持っている人は、初めのうちは悪酔いする(アセトアルデヒドによる中毒現象)が、だんだん修行しているうちに、誘導されて分解酵素が出来てくるので、アルコールにあまり酔わなくなる。ホモでアルデヒド脱水素酵素を持っている人は、初めから平気である。
ところでアルコールは催眠剤であるバルビツレートと同じような依存現象を起こすが、その依存を身体面と精神面とに分けて考えることが出来る。
身体面としては、アルコールを飲みつづけるうちに、体がアルコールなしで居られないようになることを言う。例えばお酒が切れると、「てんかん」けいれんを起こしたり、手の指が震えたりすることがある。これはアルコールによって身体が変化したことを意味する。アルコールが切れると辛くなるので、また飲み始めるわけである。
さらに酒がないと、何となく淋しくなり、お酒に頼りきりになってしまうこともある。この現象を精神的依存と呼ぶ。身体面と精神面の依存があるので、なかなかアルコールが止められないわけである。同じお酒へのクセのなり方にしても、アルコールの濃度や種類によって若干の違いがある。
一般に濃いアルコールほどクセになりやすい。例えば北欧ではアクアビットのような蒸留酒をビールなどに混ぜ、あるいはストレートで飲む。しかしそれで依存症が起きやすいのが問題になっている。
またウオッカのような純アルコールに近い風味のものは、どうしてもクセになりやすいようである。同じ焼酎でも、アルコールとしては純度が高くリキュールと混ぜればすぐカクテルになる甲類のほうが、イモなどの香りがプンプンする本格焼酎よりもヤバいという偏見を、私は持っている。
アルコールの種類との関係では、アブサントはニガヨモギのエキスから作った蒸留酒だが、あまりに依存患者の弊害が大きかったので(ゴッホやユトリロなどは、中毒患者として有名である)、ニガヨモギは禁止され、中華料理に使う八角のエキスが使われるようになった。それも濃いものは中々入手が困難で、二五度程度のものが流通している。
不眠のためナイトキャップがわりにアルコールを飲む人が多い。しかし、だんだんアルコールに強くなると、前と同じ量を飲んだだけでは眠れなくなってしまう。だからだんだん大量にアルコールを飲みたくなってくる。
アルコールは初めのうちは入眠・鎮静作用が強く現れるが、アセトアルデヒドが出来る頃になると、覚醒・興奮効果のほうが強く現れてくる。だからお酒を飲んでねそびれたときほど入眠困難になるのである。人によってはますます深酒をするようになり、朝になっても起きられず欠勤する羽目になることもある。
これがアルコール依存による「出社拒否」なのであるが、どうも土日の休日に深酒をして体調を崩し、結果的に月火に欠勤が多くなるなど、曜日によって欠勤率が違うようだ。やはりときには休肝日を設けるなどして、水分を身体からドレインし、依存症にならないよう工夫することが必要だろう。
【参考文献】
『最新お酒の健康医学』栗原雅直(ふたばらいふ新書)一九九九年
【プロフィール】
栗原雅直(くりはらまさなお)
一九三〇年東京生まれ。東京大学医学部医学科卒業、医学博士。一九九八年より財務省診療所チーフカウンセラー、精神科医。
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