洪水と感染症について

https://www.forth.go.jp/topics/2011/10181635.html  【洪水と感染症について】

アジアや中米、ケニアなどで洪水により健康リスクが高まっています。

東南アジア

東南アジア地域では、例年に比べて雨季の降水量が多かったことや台風の影響もあり、広域にわたって洪水の被害が発生しています(2011年10月13日現在)。

・タイ

2011年7月25日以来、283名の死亡者と200万名以上の被災者が発生しています。

国土の北部・中部で洪水が広がっていますが、特に、アユタヤ(Ayutthaya)、ピサヌローク(Phitsanulok)、スコータイ(Sukhothai)などのチャオプラヤ川流域で特に被害が広がっています。

・カンボジア

2011年8月半ば頃から、203名の死亡者と100万名の被災者が発生しています。特に、メコン川とトンレサップ湖及びトンレサップ川流域で洪水が広がっています。

・ラオス

2011年8月以降、30名の死亡者と43万名の被災者が発生しています。現在、ミャンマー、中国との国境付近(北西部)と南東部を除くほぼ地域全般で洪水が発生しています。

・ベトナム

ホーチミンなどのメコンデルタ地帯において、例年発生する洪水が悪化しており、34名の死者と25万名の被災者が発生しています。

・フィリピン

9月27日、10月1日と2つの台風がルソン島を直撃し、90名の死者と400万名以上の被災者が発生しています。ルソン島は首都マニラを中心として、フィリピン国内の人口の過半数が在住しています。また、10月12日にフィリピン中部を通過した台風の影響で、リゾート地であるセブ島を含む中部のヴィサワ地区でも、8名の死者と24,000名の被災者が発生しました。

・パキスタン

8月中旬に始まったモンスーンにより9月には洪水の大きな被害を受けています。南部シンド州とバルチスターン州で推定580万人が深刻な影響を受けています。

中米

中米各国は熱帯性低気圧の影響で豪雨が続き、洪水被害や土砂崩れが発生しています。

・グアテマラ

国営AGN通信によると10月17日までに28人が死亡、11万人が被災しています。

・エルサルバドル

政府は非常事態宣言を出し一部の地域に避難指示を出しています。子ども7人を含む24人が死亡し、一万3000人が避難しています。

・このほかホンジュラスやニカラグアでも死者がでているようです。

ケニア

2011年10月17日付IRINの情報によると、ケニアの沿岸地域で鉄砲水による洪水がおこっています。被災地域はモンバサのChangamwe, Kisauni, Kongowea, Likoni地区で広範囲にわたり水没しています。モンバサに隣接するKwale 県のUkundaでは野営トイレも水没しているとのことです。また多くの道路も寸断されているようです。(特にWundanyi地区とTaita-Taveta 地区.)

洪水は以下のような感染症にかかるリスクが高まる可能性があります。

水系感染症;腸チフス、コレラ、レプトスピラ症、A型肝炎など

ベクター媒介感染症;マラリア、デング熱やデング出血熱、黄熱、ウェストナイル熱など

水系感染症

洪水は感染症のリスクを増大させる可能性がありますが、人口の大移動を伴ったりせず、または水源が汚染されなければリスクは低いものです。洪水により大流行が起こる最大のリスク因子は飲料水設備の汚染ですが、たとえそれが起こっても、1993年のアイオワとミズーリ州のように、リスクをよく理解し清潔な飲料水への対策を第一とした災害対策を重視した結果、被害を最小限に食い止められた例もあります。

・汚染水に直接接触することでも水系感染症のリスクは増大します。例えば、創傷感染、皮膚炎、結膜炎、耳鼻咽喉感染症です。しかしこれらの疾患は、大流行は起こしません。

・汚染水から直接伝搬され大流行を起こす可能性のある感染症は、レプトスピラ症で、これは動物由来細菌感染症です。齧歯類の尿で汚染された水、湿った土壌や植物(サトウキビなど)、泥などに、皮膚や粘膜が接触することで感染します。大雨の後の洪水で、尿中に多数のレプトスピラを排泄する齧歯類が増加し、病原菌が広まりやすくなります。環境の変化により伝搬を促すベクター(齧歯類)数が増加しているようです。

ベクター媒介感染症

洪水は、ベクター生息地や範囲を拡大させ間接的にベクター媒介感染症を増加させることにつながります。豪雨や河川水の氾濫で溜まった水が、蚊の産卵場所となります。そして災害被害者や緊急援助隊の人々がデング熱、マラリア、ウェストストナイル熱などの感染症にかかる可能性が増大します。最初は洪水により蚊の卵が流されるかもしれませんが、水が引いた後に再び繁殖します。マラリアが流行し始めるまでの期間は通常約6~8週間です。

洪水後のマラリア流行は世界中のマラリア常在地でよく知られた現象です。

エルニーニョ南方振動に関連した周期的な洪水は、北部ペルーの沿岸部乾燥地域でのマラリアや、アメリカ大陸でのデング熱の再流行を引き起こしています。

ヨーロッパでは豪雨や洪水の後にウェストナイル熱が再流行しました。

流行のリスクは、行動の変化(野外での睡眠、疾病対策活動の中断、人混みにより蚊への曝露が増大する)や、蚊が産卵しやすい繁殖地の変化(地滑り、森林破壊、ダム建設や流域変更など)など複雑な要因によって大きく増大します。

洪水による他の健康リスク

溺死や創傷、心的外傷が含まれます。洪水による創傷後の破傷風は一般的ではなく、破傷風の集団予防接種は必要ありません。しかしながら、開放創のある人で以前に破傷風の予防接種を受けたことのある人は追加接種、他のけがをした人でも接種歴に応じて予防接種の適応となるでしょう。免疫グロブリン(Hypertet)による受動免疫は通常、予防接種を受けたことのない受傷者や極度に汚染された傷のある人に対して、破傷風患者と同様に治療上有用です。

低体温もまた問題となります。特に小児、長時間洪水に浸かっていた人で問題となります。避難所がなかったり、洪水や雨にぬれたりすることで、呼吸器感染症のリスクが増大します。

洪水による停電で飲料水処理や給水施設の遮断が起こり、またコールドチェーン(低温流通系)を含む衛生施設の機能が遮断されたりして、上述したような水系感染症のリスクが増大するかもしれません。

出典

WHO:http://www.who.int/hac/techguidance/ems/flood_cds/en/別ウィンドウで開く

IRIN:http://www.irinnews.org/別ウィンドウで開く

OCHA:http://unocha.org/別ウィンドウで開く  

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