免疫細胞の自爆の連鎖が原因?新型コロナ重症化に潜む知られざるメカニズム

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【免疫細胞の自爆の連鎖が原因?新型コロナ重症化に潜む知られざるメカニズム】

7/10(金)  日刊ゲンダイより (米国立アレルギー感染症研究所提供)

新型コロナウイルス感染症の特徴のひとつに急な重症化がある。英国のジョンソン首相もSNSで普通にメッセージを発したわずか数時間後に集中治療室に移送されるほど重篤になったことを覚えている人も多いだろう。その原因のひとつはサイトカインストームにあると言われているが、新型コロナウイルスが引き起こすサイトカインストームは従来考えられていたものと異なるシステムがあるようだ。東邦大学名誉教授の東丸貴信医師に聞いた。

「新型コロナウイルスに感染すると、かなりの割合で全身に多数の血栓が生じていることが分かってきました。心筋梗塞や脳梗塞、下肢静脈血栓症などもみられ、死因も肺血栓塞栓症が多数報告されています」

 肺血栓塞栓症とは肺の血管に血の塊(血栓)が詰まる病気だ。血流が滞り、体に必要な酸素や二酸化炭素の交換がうまくできなくなる。

■好中球細胞外トラップ

なぜ、新型コロナに感染すると血栓が生まれるのか? 従来、感染症による血栓はサイトカインストームと呼ばれる免疫の暴走により生じると考えられてきた。ウイルスなどの病原体が体内に侵入・増殖すると、免疫細胞が過剰に反応する。そのことで自らの器官を傷つける。血管の場合は、傷ついた血管を修復するために血液を固まらせる成分が集結、血栓が生まれる。

ところが、新型コロナウイルス感染症とみられる肺血栓塞栓症で亡くなった人の血栓を調べたところ、その中に好中球の死骸が多数見つかっている。そのため、新型コロナによって生じた血栓は単に免疫の暴走であるサイトカインストームにより傷つけられた血管の修復のために集まった血液凝固成分の集積だけでなく、連鎖的な「好中球細胞外トラップ」(NETs)によるものではないか、とも考えられるという。

「好中球は 白血球の一種で、通常は体内で盛んな遊走運動(アメーバ様運動)を行い、体内に侵入してきたウイルス、細菌や真菌などの病原体を食べて(貪食)、感染を防ごうとします。好中球は血管内外で安定している時には、丸い形で前後左右の区別を持たずに転がるように移動しています。病原体を認識すると、貪食するために走っていかなければなりません(遊走)。エムインクスという細胞内たんぱく質の働きで前後の軸を持つようになり、幅広し頭部や長細い尻尾が出来てから走り出します。ただし、敵の病原体があまりに多すぎる場合は、これを食べないで、自らの遺伝子情報であるデオキシリボ核酸(DNA)の網を投げて、捕らえ殺すことがあるのです。この網のことを好中球細胞外トラップ(NETs)と言います。NETsの主な成分は DNA 骨格で、ヒストン、好中球エラスターゼ、ミエロペルオキシダーゼなどの抗菌タンパク質が散りばめられています。なかでもヒストンはウイルスを殺す作用が強力です」

 NETs は2つの方式で放出される。一つはDNAの放出時に細胞膜の破たんを伴う自爆型と、自らの命を守りつつ放出する生存型 NETsだ。

「自爆型放出は細胞膜を破綻させながら放出するので、細胞内から外へ大量の NETs を放出できると考えられます。一方、生存型のNETs放出では DNA成分等を小胞の中に詰めた状態で核から細胞膜まで輸送して、膜を通して小胞から細胞外へ放出するので、 NETs 放出後も細胞は生きていられます。自爆型放出には約 2 時間かかりますが、生存型では数十分で放出できることから、微生物やウイルスを認識して活性化した直後には生存型放出を選択し、時間経過とともに自爆型が主体へなることで、より多くの NETsを放出して防御を強化していると考えられます」

つまり、サイトカインストームが生じるほどウイルスの数が増えた、新型コロナウイルス感染症の重症期には自爆型のNETsが多く見られるということだ。

■感染症で血栓ができる理由は感染した部位を封じ込めるため

「NETs はウイルスや細菌などの病原体だけでなく、血小板や赤血球も同時に捕獲します。血小板はNETsの形成を促進し、NETsに結合しているヒストンとくっついて血症板凝集を生じます。さらに、トロンビンなどの内因系凝固因子の活性化を促進して繊維状のタンパク質・フィブリンを形成します。その結果、血管内血栓を作るのです。敗血症性 DIC(播種性血管内凝固症候群=血管内に血栓ができやすくなったり、簡単に出血しやすくなったりする全身病) ができるのはこのためです。血管内血栓形成は、血流を悪化させ臓器障害の原因となりうることから、体に悪いことだと考えられがちですが、感染症の際には、感染している悪い部分を局所で血液を固めて封じ込めるための"肉を切らせて骨を断つ"生体防御機構の可能性ではないかとの見方もあります」

つまり、新型コロナウイルスの強い増殖能力は、体を守るために必要な自然免疫システムであるNETsの本来の役割をなくさせ、宿主たる人間を死に至らしめるのだ。


https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=158  【NETs形成と血小板】

解説

Neutrophils extracellular trap(NETs) とは、敗血症の際に、核の破壊を伴う細胞死が惹起された好中球が放出する、自己のDNAを主成分とする網目状の構造物のことである。NETs はエラスターゼやライソザイムといった好中球顆粒内容を含み、捕捉した細菌を殺傷する。

 一方、Toll様受容体(TLR) は、細菌表面のリポポリサッカリド(LPS)など、病原体に存在し、宿主にはないパターンを認識して、炎症性サイトカインを産生して非特異的に病原体を排除する自然免疫作用を持つ。マクロファージや樹状細胞に多く発現するが、血小板でもTLR1, 2, 4, 6, 9 が発現している。TLR-4 のリガンドであるLPS は、単独では血小板凝集を惹起しないが、血小板 TLR-4 は好中球の NETs の形成に必須である。LPS 結合血小板が好中球に結合することで、NETs 形成が促進される。LPS 単独ではNETs 形成は惹起されず、TLR-4のアンタゴニスト存在下では、血小板のNETs 形成促進作用が認められないことから、LPSが TLR-4 に結合した血小板が好中球 NETs の形成に必要であることは確かと言える。しかし、LPS は血小板に対して明らかな活性化作用を示さず、何が LPS 結合血小板の好中球への結合やNETs の放出促進作用をもたらすのかは不明である。NETs は、肝臓の類洞と肺の毛細血管で良く生じるが、このような最も細い血管では NETs によって細菌を効率よくトラップできる。NETs による抗菌作用は菌種を選ばず、一網打尽に殺菌作用を発揮できることが利点であり、敗血症の様に多数の細菌が増殖する際に有効である。一方、その殺菌作用を発揮する際、周辺の血管内皮や組織をも傷害し、敗血症時の臓器障害の原因となる。

 ヒストンもNETs に多く含まれるが、ヒストンがTLR-2 と TLR-4を介して血小板凝集を惹起し、NETs 上に血小板凝集塊が形成されると報告された。血小板 TLR-4 は LPSと結合してNETs の形成を促進し、NETs に結合しているヒストンと結合して血小板凝集を惹起する(図)。感染に際して形成されるNETs と血栓は細菌や炎症性サイトカインを局所に封じ込め、全身への波及を抑制している可能性がある。

コズミックホリステック医療 俳句療法

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