写真を兼題とする

https://ouchidehaiku.com/contents/373673  【第1回「ベンチと蔦」《始めに》《ハシ坊と学ぼう!①》】より

第1回のお題 「ベンチ・蔦・レンガ」

始めに

本選句欄では、写真を兼題としております。「おウチde俳句くらぶ」という観点において、写真を発想の踏み切り板として使うことは大変有効です。写真を糸口として、これまでの人生の様々な記憶を引き出すことができるからです。

写真を兼題とする場合、以下のような切り口が考えられます。

A 写真を見ていない人の脳内に、写真と全く同じ光景を再生させる。

B 切り取られた写真の外を想像する。

  ーどんな光景がひろがってくるのか。どんな人がいるのか。どんなモノがあるのか。

C 写真の光景の時間軸を動かしてみる。

  ー夜になればどうなるか。朝になればどうなるか、等

D 自分が写真の中にいたら、どんな行動をとるだろう。

他にも様々な発想方法がありますが、毎回具体的な句を例にとって解説していきます。参考にしてください。

初めて俳句を作る皆さんへ

今回初めて俳句を作るみなさんは、以下の方法から始めてください。

❶ 写真の中にある言葉や連想した言葉を、できるだけ沢山書きとめる。

❷ 採取した単語を、季語と季語ではないものにグループ分けする。

❸ 季語ではないグループの単語を一つ選んで、十二音の【俳句のタネ】を作る。

○○○○○ + 季語とは関係のない十二音【俳句のタネ】

季語とは関係のない十二音【俳句のタネ】+ ○○○○○

❹ 【俳句のタネ】に似合った【五音の季語】を探す。

季語の選び方のコツ

・楽しそうな【俳句のタネ】ならば、楽しそうな【五音の季語】を取り合わせる。

・悲しそうな【俳句のタネ】ならば、悲しそうな【五音の季語】を取り合わせる。

俳句は実践によって学ぶものですから、理屈を読み囓るばかりでは前に進めません。まずは一句。

チーム裾野の皆さんはここからの出発です。俳句の高い高い山を目指して、まずは最初の一歩を踏み出しましょう。

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。

「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。

「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

「ハシ坊」と学ぼう♪ はじめまして!ハシ坊です。俳句を通して「知る・学ぶ」喜びを伝えるためにボクは生まれました。ボクが箸なのか、棒なのかって?それはみんなの俳句次第です。えっ? どっちみち、「箸にも棒にも掛からない」なら、どうしようもないじゃないかって?…それは夏井先生の一言アドバイスを読んでみてから言ってね!

落ち葉の基地に猫のくぼみ冬隣 あすかきょうか

夏井いつき先生より

「落ち葉」と「冬隣」の季重なり。「冬隣」を外して、全体を整えてみましょう。

“ポイント”

秋薔薇の陽当たるベンチに先ず母を ウィヤイ 未樹

夏井いつき先生より

「年老いて外出もままならない薔薇の好きな母。ゆっくり秋薔薇を見せてあげたい」と作者のコメント。

「~に~を」という叙述が散文的です。「先ず母をベンチへ」あるいは「先ず母をベンチに」から始めて、カットを切り替えて「秋薔薇」を描写するのも一手です。

“難しい”

若者のいないキャンパス秋の風 うに子

夏井いつき先生より

「ベンチや芝生で笑い転げられる大学生活が早くもどりますように……」と作者のコメント。

学校が休みなので、「いない」と読まれる可能性もあります。コロナ禍の要素を匂わせることができると、時代が表現できるのですが。

“参った”

秋の昼ランチタイムは僅かなり お漬物

夏井いつき先生より

「大気が澄み、秋の気配が濃くなってきた頃、昼休みは木立の影、日溜りなどのあるベンチで昼食しながらゆっくりと秋を満喫したい」と作者のコメント。

「昼」と「ランチタイム」、ここに情報の重複があります。「昼」を思わせる秋の季語を探してみましょう。

“ポイント”

冷えた肘掛けのベンチひとり身に入む お漬物

夏井いつき先生より

「秋の冷気やものさびしさが、身に深くしみるように感じる」と作者のコメント。

「冷えた」と「身に入む」が重複します。

“激励”

水澄みて思ひだせない一節や お天気

夏井いつき先生より

下五「や」は難しい。語順を工夫してみましょう。

“難しい”

庭仕事手の青臭ささやけけり しみずこころ

夏井いつき先生より

「夏だったら、暑くて臭くて嫌だなと思う草抜きの匂いが、秋になると爽やかにかわる! と思ったのですが、『さやか』と『けり』の使い方がわからないまま、投句してしまってます」と作者のコメント。

「さやけけり」という使い方に問題があります。

添削例

青臭くさやけく庭仕事の両手

(※「さやけし」がク活用形容詞の終止形。「けり」に接続する時は「さやけかりけり」となります。)

“ポイント”

臨月に残ったレンガ秋の空 すみれ

夏井いつき先生より

「家を建ててすぐに子供を授かり、庭づくりが途中になりましたが、子供と作る楽しみができました」と作者のコメント。

俳句は十七音しかないので、庭造りを始めて臨月で中断して……と経過を述べることには適していません。ある部分だけを述べて、その前後は読者の想像を信じるのです。自分の思い通りに想像してもらえるよう、言葉を吟味することも大切です。

添削例

臨月の秋よ庭仕事のレンガ

“とてもいい”

秋彼岸主なき椅子の虚ろかなタマサン

夏井いつき先生より

「いつも座っていた主(ぬし)が逝って空席となった椅子に、秋彼岸の中日は殊に喪失感を感じる」と作者のコメント。

「秋彼岸」という季語に、亡くなった方への思いは充分に入っていますので、下五「虚ろかな」の詠嘆が言い過ぎてしまう結果になります。

添削例

主なき椅子よ秋彼岸の○○○

上五「主(あるじ)なき」と読み、最後の○○○で、季語の光景を描写してみましょう。

“良き”

この扉浄土に通ずか秋彼岸 タマサン

夏井いつき先生より

「秋の彼岸の中日の折、高い塀で区切られた扉のこちらと向こうが、「此岸」と「彼岸」の境目のように感じられ、彼岸に行った両親のことが思い起こされました」と作者のコメント。

上五中七が散文的です。

添削例

浄土への扉か○○○○○○○○

○○○○○○○○の部分を整えてみましょう。「秋彼岸」という季語も、「浄土」という言葉の印象に近いので、秋の彼岸のころではないかなと、読者が想像してくれる季語を探してみましょう。

“参った”

ベンチからほどよきところ枯木かな はれまふよう

夏井いつき先生より

「 ベンチの座りごこちは周りの景色が大切。枯木のみえるこの季節、この辺がいい場所かも」と作者のコメント。

「ところ」はなくてもOK。「~かな」も使いようによっては不要になりますが、ひとまずは「かな」を活かします。「ところ」の三音分を使えば、なんの枯木(冬木)かも述べられます。

添削例

ベンチからほどよき冬木桜かな

このように書くと、冬の枯木ではありますが、春になった時の様子も想像される句になります。

“ポイント”

瘤ひとつのせて背中は金秋も背負う ぷるうと

夏井いつき先生より

「背負(しょ)う顔を見ているとまだ若くて元気に見えるが、後ろ姿を見ると、その背の丸みに老いが色濃く見える。小さな背中は頼りなげでありながらも、しっかりとした足取りで、この秋も生き抜いてくれそうだ」と作者のコメント。

うーむ、俳句だけ見るとヒトコブラクダ? ……と思ったのですが、コメントを読むと親? ……まずは、そこが分かるように言葉を取捨選択しましょう。例えば、

添削例

背に瘤と金秋背負い○○○○○

こうすれば、原句が十七音かけていることを、十二音で述べられるというわけです。五音分をどう使えばよいか、推敲してみましょう。

“難しい”

秋風や人をも隠す花の園 やまだ童子

夏井いつき先生より

俳句では「花」は桜を指しますが、これは秋の花壇でしょうか。中七が説明的ですから、

添削例

○○○○○背丈に秋草の園よ

仮にこう調えて、上五から「秋」をとれば季重なりを避けることができます。

添削例

朝風の背丈に秋草の園よ

添削例

朝風や背丈に秋草の園は

「朝風」のかわりに「夕風」「潮風」「山風」などニュアンスを選ぶことができます。

“良き”

コズミックホリステック医療 俳句療法

吾であり・宇宙である☆和して同せず☆競争ではなく共生を☆

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